詩集
かえるかえる雪だるま
著 水垣カエル

 

「さがしもの」

さがしもの
さがしているものは
わかっているのに
みつけているのに
ここにはない
いつ手に入るのか
もしかしたら手に入らないかもしれない
自分ではどうにもできない
さがしもの
さがしているものは
わかっているのに
そこにあるのに
ここにはみあたらない
いくら手をのばしても
とどきそうでさわることもむずかしい
つかまえたと思っても
うなぎのように 水の中に消えて行く
わたしがさがしているものって いったい何なんだろ
わかってるはずなのに
大きな目の空いたカゴはずっとしかけられっぱなし
うなぎはそこに住みついた
水の中

 

 







信じる心を忘れないこと
なくさないこと
思いは伝わる
願いは叶う

信じている心を投げやりにしないこと
弱気にならないで
信じる
あきらめないで
信じつづける

 







 

 

「雪」

むこうは知ってて
こっちは知らない
わかってるけど
もしかしたら

希望が わからなくしているのかもしれない
みえるのはほんのちょっとの間
すぐに消えて
どこにいったのかわからなくなる
だけどいつも思い出す







「雪の中のカエル 」

雪の中のカエル
雪の中にたたずんでいるカエル
雪の上をとびはねまわっているカエル
雪が舞うのをじっと見上げているカエル
雪が頭の上に積もってきた重さを楽しんでいるカエル
雪が似合うのはうさぎだけじゃなくって
カエルだってとっても似合ってるのに
はたしてカエルは雪を知っているのだろうか
雪とカエルがお互いを知ったとき
今の時間を超えた所で
静かにデートするんだろうな


外はまだ雨 冷たい雨 そろそろ眠くなってくるけど
もうちょっとがまんしてみて

 







「雪」

冷たい
やわらかい
すぐ溶けちゃう
きたないものを包み込んで
きれいにしてくれる
マシュマロ
溶けると水になる
白い
 
雪が舞ってくる
 空を舞う
牡丹雪 
灰色の空
つもる
雪だるま
 雪ウサギ
いろんな形になって
氷とはちがう
雨が雪にかわると
音も
ぽつぽつ
から
ほさほさになる
すべての音を
たくわえている
でも
雪が溶けると
すべてのものが
流れだし
地面が
ぐちょぐちょになる

雪であることを
たもちつづけたい


苦しいことも
 悲しいことも
 淋しいことも
雪でかくしてしまって
いつもいつも
白いマシュマロでいたい

たくさん 雪を降らして
あらゆる所を
雪でおおう







「解決しない問題」

一方的な愛というものは存在しない
お互いの気持ちがあったからこそ 
そこに
愛ガ生まれる
どんなに好きでどんんなに相手のことを誰よりもわかってるつもりでも
それは愛にはならない
どんなに長い時間がかかっても 
相手の心の中に私がいなければ、
受け入れてくれなければ、
それは私の勝手な恋にしかならない
一方的にこれは愛だなんて思っていても、
それは、 本当の愛のかたちではない
ちょっとのことで左右されてしまう愛なんてないし
多分、本当にそれが生まれたとき 目に見えないベールがそっと包み込んでくれて
あたたかい、まあるい、安心な気持ちが生まれるのかな
私はまだ新しいもう一つの愛に巡り逢ってない
多分、生まれてからずっと今の私までかんじてきたのと 似てるものなのかな。
同じものかもしれない。 メリークリスマス







「かくべつなものを」

子供はジャングルジムが好き
今の私はジャングルジムにいざ登ろうとすると
足がすくむ
子供は恐怖心なんか全然なくて
一歩一歩自分の足で
絡み合う鉄の木の枝をよりすぐりながら
着実に最高峰まで登りつめる
多分そこからの眺めが
かくべつのことを覚えているから
この間、いつも登っていた大山公園の
とても大きいジャングルジムの前に立ったとき、
前よりはるかに大きくなってる感じがした
とてもじゃないけど、怖くて地面から3本目の枝で動けなくなった
この頃、エスカレーターやエレベーターを使って
高いところを手に入れている私には無理だった
足が滑って落ちたら・・・
上までいっても戻ってくるのこわそう・・・
一歩一歩登る間に、いろんなことが頭をさえぎり
すぐ地面の位置を確認し、自分の安全を確かめてる
そして、とうにかくべつなもののことなんて忘れていて
けがしなくてよかったとほっとしてる
子供の頃、簡単に手に入れていたものが
今はとてもの勇気がないと自分のものにならない
いつからこんな意気地なしになったんだろう
自分の創造してるしているものを確かめに行かなくちゃ。
自分の足で。
自分で確かめに行かなきゃ。
多分、今の私があのジャングルジムに登りつめることができたら
それは子供の時よりも何百倍もかくべつなものを味わえるような気がする
私のジャングルジムはとても大きいから、
とても時間がかかるかもしれないけど、
とても怖いかもしれないけど
登らずにはいられない
私は見たいから

 

 







「かくべつなものの周りは 、危険でつつまれている 」
そう気がつく時がきて そして、
かくべつなものは
よりかくべつなものになる
この私のきまっている時間のなかで
何回、
登りつめることができるのだろう

 

 








 

「ノート」

ノートはいつでも前のページが真っ黒になっても、 このページは真っ白になって、一行目から書くことできる 。真っ白になったからって、前の書いたものはそのまま残って 、どんどんたまっていく。 そこは人間とちがうところ。 今ちょっと思ったことを書いとくだけで、この気持ちが 色あせず残っていく。 いつか読み返したとき、はっとする。 読み返すときは多分自分の中がいっぱいになりすぎて 新しいノートを買うときだから、 私は人より忘れっぽいから(だからいいこともあるけど) 思い出にかわる前に消えていってしまうことがたくさんある気がする 。ちょっとした気持ちがなんだかもったいないから 書いておく。 自分の中からこぼれてくるものだけでいいから、 ここに残しておこう。 少しでも厚みのある人間になりたいから。








「音」

私の部屋にはカーテンがない
いつでも光を感じれるように
そして街が輝く瞬間を見逃さないように
ビーズのカーテンごしに見える世界
現実のすぐとなりにあるとてつもなく広い世界

私の部屋には窓がない
光も風の音も感じることもできず
ただ じっとそこに閉じこもっている
心の休憩所

現実から逃れるためじゃなく
現実で落ち着いて生きていくための手段
いつもなにげなく見ている木が
あんなに空に近づいて
少しづつ地球は育ってる

耳を澄まして 、地球の音を聴こう

 

 









「現実のすぐとなりにあるとてつもなく広い世界」

一つのことをやり終えると いろんな事が考えられるようになるのは
ちゃんと現実と向かい合ったという証拠 。
そして現実のすぐとなりにある世界に行くのだ 。
そしてそこがとても居心地が良くて、
気持ちいいからずっとそこに居続けると 、
そこはどんどんまたちがった、 不安な世界へと繋がっていく 。
この世界はいつまでもいる処じゃない 。
少しだけ休憩する処 。
そこは永遠に消えることがないから 、
ずっとそばにあるから。